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野口宇宙飛行士について 任務や訓練レポート、記者会見を紹介します
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野口宇宙飛行士訓練レポート 第1回
「2002年2月 STS-114ミッション固有訓練の開始」

最終更新日:2002年4月15日

私は、国際宇宙ステーション(ISS)の組み立てフライトのひとつであるSTS-114、LF-1(Logistic Flight)というスペースシャトルミッションに搭乗することが決まっています。現在、STS-114ミッションは今冬に打ち上げる予定になっていて、今年の2月11日から、STS-114ミッション固有の訓練が開始されました。NASAジョンソン宇宙センター(JSC)のアストロノート・オフィス(宇宙飛行士室)内の席替えも行われ、STS-114の4人のクルーが同じ部屋になり、これから打上げに向けての準備が着々と整ってきました。

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KSCで訓練中の野口宇宙飛行士(右から2番目)
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KSCでの訓練の様子
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左から、マット・マイヤー(エンジニア)、野口宇宙飛行士(ミッションスペシャリスト)、アイリーン・コリンズ(船長)、スティーブン・ロビンソン(ミッションスペシャリスト)
写真提供:NASA

LF-1は、ISSの運用と補給を行うミッションです。主な目的は、ISSへの物資や機器の補給・運搬・交換を行うことです。また、ISSの組立てとして、船外保管プラットフォーム2(External Stowage Platform-2: ESP-2)というISSの交換部品を置いておくための保管スペースを、ロボットアームと船外活動でISSの外側に組み付ける作業があり、その船外活動を担当することになっています。それ以外にも、実験装置をISSの外側に取り付けたり、ISSの外部に取り付けられるカメラに関する船外活動が予定されていています。ISSへの補給とISSの組立て作業を同時に進めていくということが大きな特徴です。

LF-1ミッションでの私の主な役割は、スペースシャトルの操作に係る作業(ISSとドッキングしている間のスペースシャトルの状況を正常に保つ作業など)や、船外活動クルーとして船外活動を行うことです。また、スペースシャトルのペイロードベイと呼ばれる貨物室にMPLM(Multi Purpose Logistic Module)というモジュールを積んで、軌道上で、MPLMをISSに一時的に取り付けるのですが、MPLMには、ISSへの補給物資や実験装置や機器が搭載されており、私は、物資の輸送、作業の主担当として、確実にそれらの物資をISSに運び込み、地上に持って帰らなければならないものをMPMLに戻す作業を行います。

LF-1ミッションで担当する業務の訓練は打上げの9ヶ月前くらいから本格的に開始されます。現在は、シャトルシステムに関する復習や、ISSに関する基礎的な学習、その他の準備段階の訓練を行っているところです。また、少し前に、写真とビデオ撮影の訓練も始まり、カメラの構成、シャッター、レンズ、フィルム、ライト、フィルター等の基本について学びました。

9ヶ月前くらいになると我々シャトルクルーの4人一緒の訓練が始まります。船外活動に関しても、9ヶ月前からNBL(Neutral Buoyancy Laboratory: 無重量環境訓練施設、巨大なプールの中に実物大のISSの模型を沈め、中性浮力を利用して船外活動の訓練を行う施設)での潜水訓練が始まり、月に1回くらいのペースで、打上げ直前まで訓練を行います。

我々のクルーは、第7次の長期滞在クルーと一緒に宇宙に行きますが、滞在クルーは長期滞在のための訓練が別途行われており、打上げの1,2ヶ月前までは我々とは別のスケジュールで訓練を行います。最後の1,2ヶ月になったら、シャトルクルーとその長期滞在クルーとで一緒にやらなければならない船外活動やロボットアームの操作などの、協調しなければならない作業を共同で確認し、各作業においてどちらがどの程度まで責任をもって行うかなどの調整を行って、打上げに臨むことになります。

私がSTS-114ミッションのクルーに決まったのは2001年4月ですが、ミッションスペシャリストの基礎訓練とミッション固有訓練の間にやっておかなければならない訓練がいくつかあり、任命されてから最近までは、それらの訓練を行っていました。具体的には、ランデブー、ロボティクス、船外活動に係る訓練です。

まず、スペースシャトルとISSとのドッキング作業に必要な技術を習得するためのランデブーの短期集中の訓練コースを受講しました。

またロボットアームの基礎的な訓練である短期集中のGRT(Generic Robotics Training)コースを履修しました。GRT訓練とは、ISS、シャトルなどのロボットアームの全てに共通する一般的な知識、技能および心構えを習う訓練です。具体的には、ロボットアームはどうやって動くのか機械工学を学んだり、コンピューター上のCGを使いながらロボットアームの操作を学んだり、モニターに映し出されるカメラ画像の使い方などを学んだりしました。このミッションは、船外活動が重要な作業なので、船外活動をやる上で知っておく必要のあるロボットアームに関わる基礎的な能力という観点で今回の訓練を受講しました。例えば、クルーがアームを動かしているときに、彼らがどういうことを気にしていて、どういうポイントをミスしてはいけないのか知りたいと思っていましたので、いい経験になりました。このミッションが終わったあとに、時間があればロボットアームについて更に訓練を積みたいと思っています。

また、船外活動に関しては、ISS組立て作業を担当するために必要な基礎的な船外活動技術を習得するため、船外活動上級訓練を履修しました。

それ以外に、昨年の12月と今年の2月に、NASAケネディー宇宙センター(KSC)で、ISSのS0トラス、S1トラス、そしてMPLMのCEIT(Crew Equipment Interface Test)およびハードウェアの確認に参加しました。CEITは、実際にミッションに関係するISSの機器(ハードウェア)の使い勝手を確認するために、軌道上で実際に使用する宇宙飛行士が自ら確認する試験です。S0トラスは、今年の4月にSTS-110ミッションで打上げ予定なので、打上げ前に現物を確認できる最後の機会でした。我々のミッションでは、船外活動でESP-2(External Storage Platform-2)を、ISSのUSエアロック“クエスト”付近にとりつけるのに先立ち、ESP-2用の補助電力ケーブル(セカンダリーパワーケーブル)をS0トラスのコネクタに接続します。実物を見ることで、船外活動の明確なイメージがわいてきました。図面で見るのと、実物を目の前にするのとでは受ける印象は全く違います。機会を捕らえて、直接、フライト品(本物)に触れることは大切だと実感しました。

S0トラスは、非常に大きなハードウェアですから、我々が実施する船外活動以外にも、船外活動として面白い部品がいっぱいついています。実物を見て触ったということは長期的に滞在することを考えたときに、非常に大事な体験になったなという気がします。

CEITは、我々クルーがイメージをしっかり掴めるとともに、インストラクターの人達にとっても本物に触れる貴重な機会となったと思います。我々を訓練するためにもインストラクタ自身が問題点などをきちんと把握しておかなければならないからです。機器に詳しいエンジニアとディスカッションできたのも、非常に有意義でした。

次回の訓練レポートは、4人での共同訓練が開始されたことについて報告する予定です。お楽しみに。

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