このページの先頭です ヘッダーなどをとばして、このページの本文へ
野口宇宙飛行士について 任務や訓練レポート、記者会見を紹介します
ここからサブメニュー ここから本文

野口宇宙飛行士訓練レポート 第10回
「ミッション固有訓練の再開とスペースシャトル飛行再開に向けた取り組み(1)」

最終更新日:2004年7月28日

これまで野口宇宙飛行士は、主にスペースシャトルの飛行再開に向けた技術開発試験を行ってきましたが、それに加えてSTS-114ミッション固有訓練が再開されました。今回はスペースシャトルの飛行再開に向けた取り組みとミッション固有訓練の様子をご紹介します。

外部燃料タンク分離後撮影訓練

ビデオ
写真撮影訓練
Real Video [2分33秒]
再生

野口宇宙飛行士とアンドリュー・トーマス宇宙飛行士は、スペースシャトルから外部燃料タンク(External Tank: ET)が分離した後、フライトデッキから分離したETを撮影する任務を負っています。これは、コロンビア号事故調査委員会の勧告に対応するため、ETについて大幅な設計変更を行いましたが、その改修が上手く機能しているかどうかを確認するために実施する作業です。野口宇宙飛行士はデジタルビデオカメラ、トーマス宇宙飛行士は400mmの望遠レンズを装着したデジタルスチルカメラで撮影します。解像度はスチルカメラの方が高いのですが、分離後のETの挙動はビデオカメラの方が良く捉えることができますので、両方のカメラでそれぞれの特徴にあった撮影を行います。

野口宇宙飛行士からのひとこと

本番では1,400~2,000フィート(約430~610m)といった距離から、倍率の高い望遠レンズで動きのある被写体を撮影しなくてはならないので、そのような条件下でもズームやフォーカスをあわせ、フレーム内に適正に収まるような撮影の訓練をしています。通常の訓練の時は、ジョンソン宇宙センター内をジョギングしている人とか、構内の道路を通過する自動車を被写体としてトレーニングしているんです。

KC-135を使用したタイル修復技術試験

写真
KC-135機内で試験中の野口宇宙飛行士とSTS-114クルー
(写真提供:NASA)

スペースシャトルの飛行再開に向け、耐熱タイルが損傷を負った場合、軌道上で修復する技術を開発しています。

ビデオ
KC-135機内でのタイル修復作業
Real Video [1分16秒]
再生

今回の試験は、技術開発のための試験で、補修剤を吹き付ける位置とパネルの距離・角度、温度等の条件を少しずつ変え、この補修剤の吹き付け位置と粘着状況の確認を行いました。試験はKC-135という飛行機で作り出された無重量環境の中で行われました。STS-114のクルーは、野口宇宙飛行士の他にスティーブン・ロビンソン宇宙飛行士、トーマス宇宙飛行士、チャールズ・カマーダ宇宙飛行士も参加しています。

野口宇宙飛行士からのひとこと

KC-135内でJAXAの旗を掲げる野口宇宙飛行士
写真提供:NASA

補修剤は主になる材質と凝固剤を混ぜ、CIPAA (Cure In Place Ablator Applicator)という鉄砲のような形をした装置を使って吹き付けます。ノズルとテストサンプルのパネルとの距離、角度、補修剤の温度といった条件をいろいろと変えることによって、最適な条件を確認しています。前回は華氏90度(摂氏32度)程度、今回は華氏60度(摂氏16度)程度という条件で試験しました。結果は良好だったと思います。無重量環境で試験を行うと、重力環境で試験したときとは別の挙動が見られるんですね。だからこそ、無重量環境で試験を行うのですが、今後は、こういう基礎データを基に、軌道上での制約を考慮しながら、運用手順を策定していくという段階になっていきます。

ケネディ宇宙センター(KSC)において、STA(Shuttle Training Aircraft)を使用した着陸訓練に同乗

画像
STA(Shuttle Training Aircraft)
(写真提供:NASA)

スペースシャトルを操縦するコマンダーとパイロットは、定期的にスペースシャトルの着陸訓練を実施します。この着陸訓練ですが、スペースシャトルの飛行特性に合わせて製作されたスペースシャトル着陸訓練機(Shuttle Training Aircraft: STA)という航空機を使用し、高度20,000フィート(約6km)くらいからタッチダウンまでの操縦をシミュレーションします。この機体の座席はスペースシャトルの座席と同様に製作されており、スペースシャトル着陸時の感覚を養うことができるようになっています。さらに今回は、オレンジ色の与圧服を着用して、周囲の視界の様子や、グローブをはめた時の操作性といったことを確認する訓練となりました。

野口宇宙飛行士は、着陸時の作業や感覚になれるため、アイリーン・コリンズ船長の後ろに同乗しました。

野口宇宙飛行士からのひとこと

スペースシャトルと同じ15~18度という進入角で着陸します。通常の旅客機が3度という角度で滑走路に入っていくことを考えると、まさに「Fly like a rock」、石が落ちてくるような様相です。スペースシャトルは、エンジンを噴射して軌道を離脱した後、まるで「落ちてくるよう」に着陸するわけです。コマンダーやパイロット達は、スペースシャトル特有の感覚を継続して身につけている必要があるわけです。

KSCでスペースシャトル・ディスカバリーのタイルを確認

STAでの訓練にあわせて、スペースシャトル「ディスカバリー号」が格納されているオービタ整備施設(Orbiter Processing Facility: OPF)へ行き、スペースシャトルを覆っているタイルを確認しました。現在、タイルの補修技術を開発するにあたって、KC-135を使用した試験を繰り返し行っています。標準的な形のタイル補修については、何度も試験しているのですが、5月末の飛行のときは、特殊な形状のタイル補修試験を実施しました。ランディング・ギアを格納するドアの周辺は、開口部のタイルがぴったりと密着する必要があることから、断面が三角形をしているという特性があり、標準的なタイルとは修理方法が異なります。このようなタイルがダメージを受けても、その隙間から熱いガスが入ってこないよう、補修しなくてはなりません。

野口宇宙飛行士からのひとこと

特殊なタイルがダメージを受けた際の補修について、先日KC-135で試験しました。しかし、試験時に使用したパネルは、プラスチック製の模型ですので、具体的にどのような形状のものかという実感を自分の中でつかむために、現場に行って確認を行いました。

▲このページの先頭へ
このページの本文はここまでこのページの先頭に戻る