コントロール・モーメント・ジャイロ(CMG)
最終更新日:2005年7月5日
コントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyros: CMG)は、回転する円盤(フライホイール)の力を利用して、大型の宇宙機の姿勢を制御する姿勢制御装置です。CMGは人工衛星の姿勢制御に使用されているリアクション・ホイールよりも大きな角運動量、トルクを発生することができます。この力の大きさは、フライホイールの角運動量とジンバルの回転速度の積で決まり、リアクション・ホイールに比べると、数十倍のトルクが得られます。
CMGは国際宇宙ステーション(ISS)以外としては、アメリカのスカイラブと、ロシアのミール宇宙ステーションの姿勢制御用として使用されていました。
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Z1トラスに取り付けられた4基のCMG(断熱カバーを取り付ける前の状態)
(写真提供:NASA.JAXA) |
ISSのCMGは、Zenith(Z)1トラスに4基(1基の重量、約281kg)設置されています。CMGを使うことにより、推進剤を使用する小型ロケットエンジンスラスタをほとんど使うことなくISSの姿勢制御や姿勢変更を行うことができます。このCMGは若田宇宙飛行士が搭乗した3Aフライト(2000年10月)で、Z1トラスに取り付けられてISSに運ばれ、5Aフライトから使用が開始されました。
CMGは、大型の円盤状のはずみ車(フライホイール)を一定速度(6600rpm)で回転させて、大きな角運動量を持たせておき、そのフライホイールを別のモータで駆動するジンバルで傾けることにより、おもちゃの地球ゴマで体験できるようにジャイロ効果による大きな回転力を発生することができます。このようにして、ISSの姿勢を維持したまま、姿勢に対する外乱を吸収することができます。また、ホイールのスピン軸を変更することにより、ISSの姿勢を変更することもできます。
ISSの姿勢をCMGで安定させるためには、最低でも2個のCMGが稼働し、必要な角運動量を発生している必要があります。このため、CMGが故障した場合にも軌道上で交換できるように設計されています。