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野口宇宙飛行士について 任務や訓練レポート、記者会見を紹介します
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野口宇宙飛行士訓練レポート 第2回
「4人の力を最大限にいかすために」

最終更新日:2002年5月8日

宇宙飛行で一番大切なことは、全員がそれぞれの力を発揮して、チームとしての成果が高くなるようにクルーが協力することです。どんなに優秀なパイロットや科学者でも、自分一人だけでは宇宙に行けません。スポーツの世界ではチームワークを発揮することが大切だとよく言われますが、宇宙飛行士の世界でも同じです。今回は宇宙飛行士訓練でのチームワークの話をします。

チームワークを科学する-クルー・リソース・マネージメント

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写真提供:NASA.JAXA

宇宙飛行士の世界のチームワークは「みんな仲良く、協力して」というような漠然としたものではありません。メンバーそれぞれの責任範囲と仕事量をしっかり決めたうえで、誰かがミスしてもカバーしあえるようにバックアップ役を考えておく、そしてそれぞれのメンバーが持つ能力と資質を最大限に生かし、チームとして最大の成果を生み出すーこれが我々宇宙飛行士に要求されるチームワークです。NASAでは、このようなチームワークを実現するための手法をクルー・リソース・マネージメント(CRM)と呼び、スペースシャトルクルーの訓練に取り入れています。

船長の役割・クルーの役割

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写真提供:NASA

クルー・リソース・マネージメントを考える上で、それぞれのメンバーの役割をはっきりさせることはとても重要です。リーダーである船長は、クルーメンバーそれぞれの経験や長所をうまく生かせるように担当業務を割り振りします。一方、我々クルーは与えられた業務と自分の責任範囲をよく理解して、チームとしての成功に繋がるように仕事をこなしていきます。ミッションを通して、自分が担当している仕事は何で、他の人はどういう仕事をするかということを把握し、コミュニケーションをうまくとりながら、ミスや仕事のもれがないようにしていきます。船長・クルーそれぞれの役割をリーダーシップ、フォロワーシップという言葉で表すこともあります。

クルーミーティング

チームワークを向上させるため、毎週のようにクルーミーティングと呼ばれる会議を行うようになりました。このミーティングでは船長がイニシアチブを取って、個々の作業での4人の作業分担を話し合っています。たとえばパイロットのジムは前回のフライトでISSへの物資補給を経験しているため、その経験を生かして補給物資の管理を担当することになりました。ミッションスペシャリストのスティーブはフライトエンジニアとしてパイロットとコマンダーを補佐することになりました。私はミッション中二回行われる船外活動の主担当です。クルーの代表として船外活動に関する調整をしています。チームワークは、このクルーミーティングと、訓練を通じて得たものをフィードバックさせながら確立されていきます。

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写真提供:NASA.JAXA

フライトに向けて

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写真提供:NASA.JAXA

2月から4人そろっての訓練が始まっています。同じメンバーで訓練をするのはとても効果的で、かつやりやすいと感じます。というのは、これまでの基礎訓練では、毎回違ったメンバーで訓練を行うのでそれぞれのやり方やペースを掴むまでが大変で、お互いが何をすべきか見えてきません。ところが、いつも同じ4人のメンバーでいろいろなシミュレーションを経験していくと、他の人が何をしていて、自分が何をすべきかというのがだんだんわかってきます。チームとして能力を高めるためには、どういうことをお互い考えなければならないか、そこに行くための早道は何かということを考えるようになります。ちょっと気取った言い方をすればAll for one, One for allということでしょうか。いつも4人で和気あいあいと訓練を進めていますが、このメンバーで一丸となってミッションを成功させるのだという意気込みが湧いてくるのを実感しています。

LF1クルーを紹介します

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写真提供:NASA

船長のアイリーン・コリンズは、今回が4回目の飛行になります。最初の2回はパイロットとして、そして3回目は女性初の船長としてスペースシャトルに搭乗(STS-93)しました。アイリーンは、自分のやり方を押し付けるようなことはせず、自分の意見を提案してクルーの意見を上手に引き出し、その意見を尊重してくれます。彼女は船長としてのリーダーシップを発揮し、ミッション全体が成功に繋がるように我々クルーの舵取りをしていきます。

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写真提供:NASA.JAXA

パイロットのジム・ケリーは、今回が2回目の飛行になります。ジムと私は、ASCAN(Astronaut Candidates:宇宙飛行士候補者)クラスの同級生のため、以前から付き合いがあり気心が知れています。彼の前回のミッション(STS-102)は今回のミッションによく似ているため、STS-102での経験を踏まえた有益なアドバイスをしてくれます。

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写真提供:NASA

MSのスティーブ・ロビンソンは、今回が3回目の飛行になります。第4次長期滞在クルーのバックアップメンバーだったので、ISSに関して最新の知識を持っています。また、向井宇宙飛行士と一緒に飛行(STS-95)したこともあり、日本に対しても深い理解があります。

クルーの詳細についてはこちらもご覧ください。

今回の報告はここまでにしましょう。ちょっと抽象的な話が多かったですね。次回は具体的に何をやっているのか、訓練の様子をご紹介するつもりです。

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