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野口宇宙飛行士について 任務や訓練レポート、記者会見を紹介します
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野口宇宙飛行士訓練レポート 第9回
「新生STS-114 ~スペースシャトル飛行再開に挑戦する新たな仲間たち~」

最終更新日:2004年6月30日

日本の皆様、こんにちは。Houstonの野口聡一です。
現在、来年3月の打上げを目指してトレーニングを行っており、打上げ9ヶ月前という状況です。思い起こせば、今の状況というのは、2003年の3月が打上げ予定だった2年前の様子によく似ています。

そのときと明らかに違うのは、メンバーが3名増え、STS-114のクルーが7名体制になったことでしょうか。*

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STS-114の7名のクルー
(写真提供:NASA)

飛行再開(Return To Flight: RTF)ミッションに向けて、3名の宇宙飛行士たちがオリジナルのクルーに追加され、新生STS-114として発足したのは、昨年の11月のことでした。これは、飛行再開に向けて、スペースシャトルをより安全にするために実施しなくてはならない新たな作業が多く追加されたことにより、それぞれのクルーが個別の作業について、より専門的に集中できるようにするためです。3名が加わってくれたおかげで、自分のやるべきことが明確になったということです。

今回は、新しい仲間たちの役割と、その人柄を皆さんに紹介したいと思います。

* 従来STS-114ミッションは、スペースシャトルクルー4名+長期滞在クルー3名の体制でしたが、2003年11月にスペースシャトルクルー7名体制となりました。

アンドリュー・トーマス(Andrew S.W. Thomas)宇宙飛行士
ミッション・スペシャリスト3(MS3)

トーマス宇宙飛行士は、スペースシャトル・ミール(Shuttle-Mir)計画の最後の滞在者で、長期滞在も141日間経験している大ベテランです。前回の飛行では、船外活動(Extra Vehicular Activity: EVA)を1度経験しています。

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アンドリュー・トーマス宇宙飛行士(左)とアイリーン・コリンズ船長(右)
(写真提供:NASA)

今回は、スティーブン・ロビンソン宇宙飛行士と私がEVAを実施している時に、船内から手順を確認し、船外で作業をしている宇宙飛行士をサポートする役目を担当することになっています。つまり、EVAがスムーズに進むように全体を監視する、いわばEVAの指揮者ですね。

トーマス宇宙飛行士は、自分のEVA経験に基づいてアドバイスをしてくれることが多く、皆が見落としやすいことによく気がつきます。もちろん、そういうミスが出ないように、チーム全体で気をつけるわけですが、一連の流れの中で作業をしていくと、どうしても見落としがちな事柄が発生してしまいます。陥りやすいミス、気をつけていないと忘れがちなポイントを見抜く力がある宇宙飛行士です。 彼はメンバーの中では最年長で、STS-114に加わる前は宇宙飛行士室の室長代理も務めるなど、宇宙飛行士室の中でも一目置かれる兄貴的存在で、クルーの皆からも頼りにされています。

ウェンディー・ローレンス(Wendy B. Lawrence)宇宙飛行士
ミッション・スペシャリスト4(MS4)

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ウェンディー・ローレンス宇宙飛行士(右)
(写真提供:NASA)

兄貴がトーマス宇宙飛行士であれば、ローレンス宇宙飛行士は姉貴的存在です。実際、トーマス宇宙飛行士と同じ宇宙飛行士候補生クラスでトレーニングを受けました。ロシアでの滞在経験も長く、スペースシャトル・ミール計画のバックアップクルーでもありました。国際宇宙ステーション(ISS)プログラムの担当でもあったため、そこで行われている様々な活動についても精通しています。ISSが関わるミッションにぴったりの宇宙飛行士というわけです。

STS-114自体はスペースシャトルのミッションですが、ISSへ物資補給を行うこともこのミッションの重要な目的の一つであるため、補給作業部分については、彼女の経験や考え方に頼る部分が多くあります。

また、私たちのEVA中に、「カナダアーム2」(ISSのロボットアーム)を操作するのはローレンス宇宙飛行士の役割です。ISSの姿勢を制御しているコントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyro: CMG)の交換やISSの船外に機材を保管するための船外保管プラットフォーム 2(External Stowage Platform: ESP-2)を組み立てる時などは、カナダアーム2に乗って移動することがあるため、彼女との協調は重要になります。

チャールズ・カマーダ(Charles J. Camarda)宇宙飛行士
ミッション・スペシャリスト5(MS5)

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チャールズ・カマーダ宇宙飛行士(左)
(写真提供:NASA)

もともとラングレー宇宙センターの技術者で、飛行再開ミッションに向けた様々な技術的検討に対し、大変興味深く注目しています。搭乗するクルーの視点だけでなく、技術者としての感性をとても大事にしている宇宙飛行士です。開発の方向性が正しい方を向いているかどうかを注意深く観察していて、クルーの代表としてミーティングに出て行くことも多くあります。

ミッションにおいて、彼は主に、スペースシャトルのロボットアームを操作する予定です。いわゆる、ブームを使用した耐熱システムの検査などを彼が担当するわけです。 実は、カマーダ宇宙飛行士、ジェームス・ケリー宇宙飛行士と私は宇宙飛行士候補生クラスの同期生でした。また、カマーダ宇宙飛行士も私と同様、今回が初飛行ということで、境遇が似ており、親近感が沸きますね。

4人体制から7人体制へ

もちろん、アイリーン・コリンズ船長、ケリー宇宙飛行士、ロビンソン宇宙飛行士とも引き続き供に訓練を行っています。4人で積み重ねてきたことを不必要に繰り返さず、また新しく増えた3名の戦力を有効に生かせるように努力しています。

以前の体制から変更になった具体例をご紹介しましょう。

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飛行機(KC-135)を使用したタイル修復技術試験でのひとこま(右から野口、トーマス、カマーダ、ロビンソン宇宙飛行士)
(写真提供:NASA)

打上げ時にフライトデッキに搭乗するクルーはコリンズ船長、ケリー宇宙飛行士、ロビンソン宇宙飛行士、そして私で変更ありませんが、帰還時は、そこにトーマス宇宙飛行士が入り、訓練を行っています。

また、ISSへのランデブ・ドッキングの時は、以前はロビンソン宇宙飛行士と私も作業に加わっていましたが、今はローレンス宇宙飛行士とカマーダ宇宙飛行士がその役割を担当しています。

私が主に担当しているEVA業務にも変更がありました。以前はコリンズ船長が船内から私たちのEVAをサポートする役割で、ケリー宇宙飛行士がアーム操作を担当する予定でしたので、4人全員がEVAに何らかの形で参加していました。現在は、主にトーマス宇宙飛行士、ロビンソン宇宙飛行士と私でEVAに関係する作業をおこなっています。EVAに関しては、これからも、飛行再開に向けた技術開発が進むにつれ、作業内容が変わる可能性が多くありますが、3人で上手く協調していきたいと思っています。

今後、打上げスケジュールが固まってくれば、目標に向けて更にエンジンがかかってくるでしょう。スペースシャトルを復活させ、ISSの建設を再開し、未来の有人宇宙活動への夢をつなぐために、努力していきたいと思っています。

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