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野口宇宙飛行士について 任務や訓練レポート、記者会見を紹介します
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野口宇宙飛行士訓練レポート 第13回
「ミッション固有訓練とスペースシャトル飛行再開に向けた取り組み(2)」

最終更新日:2004年10月19日

第10回に続き、スペースシャトルの飛行再開に向けた取り組みとミッション固有訓練の様子をご紹介します。

バーチャルリアリティ訓練設備(Virtual Realty Lab)でのSAFER訓練

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バーチャルリアリティ訓練設備でSAFER訓練を行う野口宇宙飛行士
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バーチャルリアリティの世界

ISSにおいて船外活動(EVA)を実施する宇宙飛行士は、緊急事態が発生した場合、セルフレスキュー用推進装置(Simplified Aid For EVA Rescue: SAFER)というジェットパックを使用して、ISSへ帰還できるようにトレーニングを行います。地上では、実際にSAFERを装着した訓練を行うことができませんから、仮想現実(Virtual Realty)技術を使用して、トレーニングを行いました。

また、スペースシャトルの耐熱材を軌道上で検査する技術が検討されていますが、基本的な手法としては、スペースシャトルのロボットアームにブームを装着し、その先端にセンサーを取り付けて、スペースシャトルの隅々まで検査する案が検討されています。その手法になんらかの問題が発生した場合のバックアップ手段として、実際に宇宙飛行士がEVAを行いSAFERを使用しながらカメラ等で検査するという手法も考えられています。

野口宇宙飛行士は、通常のSAFERトレーニングついては何度も経験しており、スペースシャトルの耐熱材検査作業についても訓練メニューに取り入れています。

無重量環境訓練施設での船外活動訓練

ビデオ
野口宇宙飛行士による船外活動訓練についての説明
Real Video [1分39秒]
再生

無重量環境訓練施設(Neutral Buoyancy Laboratory: NBL)において、ISSの姿勢を制御しているコントロール・モーメント・ジャイロ(Control Moment Gyro: CMG)交換作業、船外保管プラットフォーム2(External Stowage Platform-2: ESP-2)の取り付け作業、米国材料曝露実験装置(Material ISS Expriement: MISSE)の取り付け作業の復習訓練を実施しました。

これらの訓練は、今まで数え切れないほど実施してきましたが、それまでとは違い「クロス・トレーニング」という方法でも実施しました。これは、EV1(主担当)とEV2(副担当)の役割を交換して、作業の訓練を実施するというものです。つまり、スティーブン・ロビンソン宇宙飛行士は野口宇宙飛行士の役割を、野口宇宙飛行士はロビンソン宇宙飛行士の役割を担当しました。これは、相手の立場から作業を見ることによって、別の視点を養うことを目的としています。また、緊急事態が発生した際、手順の組み換えが発生しても、相手のことを十分に理解し作業できるように備えるという意味合いもあります。

シャトル・ミッション・シミュレータでの訓練

シャトル・ミッション・シミュレータ(Shuttle Mission Simulator: SMS)は、打上げや着陸、軌道上運用の訓練を行う設備で、ジョンソン宇宙センター(JSC)に設置されています。SMSには、可動式のモーション・ベース(Motion Base: MB)と固定式のフィックスド・ベース(Fixed Base: FB)のふたつがあります。可動式のSMS-MBは、打上げ、着陸時の訓練に使用される設備です。打上げの訓練時には操縦席を垂直に立て、打上げ時の振動や着陸時の姿勢などを忠実に再現します。固定式のSMS-FBは、主に軌道上運用の訓練に使用されますが、打上げから着陸までの一連の作業を通した訓練も行うことができます。

SMS-FBでの軌道投入後訓練

ビデオ
野口宇宙飛行士による軌道投入後訓練についての説明
Real Video [1分21秒]
再生

外部燃料タンク(External Tank: ET)が分離した直後、スチールカメラ(アンドリュー・トーマス宇宙飛行士担当作業)とビデオカメラ(野口宇宙飛行士担当作業)で撮影する作業が予定されています。その撮影作業から一連の軌道投入直後に予定されている作業までをSMS-FBでシミュレーションしました。

スペースシャトルは、最初の約8分30秒間は「ロケット」としてエンジンにより加速していますが、その後は「宇宙船」になるわけです。その「宇宙船」で宇宙飛行士たちが必要な作業ができるよう、フライトデッキやミッドデッキの模様替えを行いますが、その作業の訓練です。

訓練は、通常のタイムラインに不具合が発生した場合を想定して実施しました。もちろんクルーは、どのような不具合が発生するか、事前に知らされているわけではないので、トレーナーチームが組み込んでくる様々なシステムトラブルに対処しつつ、通常のタイムライン作業をこなしていくことができるよう訓練します。また、打上げが近づくと、スペースシャトルと実物大の訓練装置で、実際の飛行用スーツを着用し、軌道投入後訓練を実施することになります。

SMS-FBでの軌道離脱準備訓練

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SMS-FB内で軌道離脱準備訓練を行う野口宇宙飛行士

軌道投入後の訓練の他に、軌道離脱準備作業のための訓練もSMS-FBで行われました。スペースシャトルは、軌道上での任務を終了し、地上へ帰還する際は、「宇宙船」としての役割から帰還するための「グライダー」へ模様替えをする必要があります。まず、開いているペイロード・ベイ(貨物室)のドアを閉じるとともに、軌道離脱に向けて軌道修正を行います。また「宇宙船」の中では、宇宙飛行士が生活するための設備である調理台やトイレ設備を起動していますが、それらを停止するとともに、座席やスーツ着用のための準備を行います。それら一連の作業を7名全員でシミュレーションしました。

野口宇宙飛行士からのひとこと

フィックスド・ベースを利用した軌道離脱訓練ですが、新しい3名のクルーが加わってから、初のトレーニングを行いました。コロンビア号事故前の計画では、通常の帰還準備に加え、ISSから帰還するクルーのサポートも実施することになっていました。今回、新クルー3名が追加になったことによって、自分の作業範囲が明確になり、より専門的に担当することができるようになりました。

SMS-MBを使用した打上げシミュレーション

可動式のSMS-MBを使用した打上げシミュレーションは何度も実施していますが、コロンビア事故後、STS-114固有の条件に合わせた環境で実施する初のシミュレーションが実施されました。

打上げシミュレーションといっても、通常の飛行はもちろんのこと、メインエンジンなどの重要な装置の不具合が複数同時に発生した時、クルー同士が協力し合って、スペースシャトルを安全に帰還させることができるようになることを目的としています。NASAでは、このひとりひとりのクルーの能力を有効に生かすことを"Space Flight Resource Management: SFRM"と呼んでおり、チームとしてSFRMを高めることを非常に重要視しています。不具合が複数発生し、作業が忙しくても、個人の役割分担と責任範囲を明らかにし、お互いにコミュニケーションを上手く図ることによって、困難な状況でもチームで協力し合って打開できるよう、訓練を繰り返します。

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